天下無敵
心身の働きを阻害し、パフォーマンスを低下させるすべてを、敵と呼びます。
今、日本では童心を無くした子供が増えています。それは、大人も同じです。
奇跡を起こせるのは夢と希望です。頭を使っても、気を使っても、奇跡は起きません。ここに、NPO法人BBフューチャー阪長友仁氏が、ご自身の体験から日本を分析され、季刊誌「道」No184に掲載されたものをご紹介させていただきます。生きることの根底にあるのは「利他」です。自己の確立と思っていても、実は「利己」になってしまっていることに気付いていない大人も多いのでは・・・。
日本の野球を世界から見つめて
子供たちの能力を最大限引き出すドミニカ共和国の野球指導
NPO法人BBフューチャー 阪長友仁
カリブ海に浮かぶ人口1000万人の小国ドミニカ共和国。この国が、日本の10分の1の人口でありながら、10倍以上のメジャーリーガーを輩出する野球強豪国であることは、まだまだ知られていない。そこで展開する子供たちの選手育成法は、目先の勝利ではなく、ひたすら子供の持つ能力を長いスパンで育み将来的に開花させるありかたを貫くものであり、その根底にあるものは、日本の野球界はもちろんのこと、スポーツ界全体、さらには教育界や組織の在り方すべてに参考になる取り組みである。
24歳から開発途上国への協力事業に携わり、アジア、アフリカ、中南米における野球指導や、グアテマラ共和国でのJICA企画調査員としての勤務経験のある阪長氏が、2014年末より2ヵ月間、研修目的でドミニカ共和国に滞在。氏を通して見えてくる、本当の意味での教育とは何か。
取材2015年2月4日 大阪にて
Vol 3
最も大切にされる選手への
敬意と信頼
この日本の仕組みに拍車をかけるのが、甲子園大会だ。注目を浴びるだけでなく、「熱闘だ」と言ってはメディアが美談にしたり、負けて泣いているチームを映し出してドラマをあおったりする。そうすれば新聞も大いに売れ、学校の名も知れ渡る。しかし、その先にあるものは何か。
そこに浮き彫りにされるのは、もしかしたら、子供たちの犠牲の上に多くの大人たちが、生計を立てるという構図かもしれない。
長年、中南米の国々と野球を通して触れ合う中で、阪長氏は、こうした日本の子供の成長に対する全体的なシステムのあり方や、それに合わせなければならない指導の在り方に対し、疑問を感じてきたという。
ドミニカの指導者の根底にあるのは、「個人個人の線湯たちが持つ能力を最大限伸ばしてあげよう」という思いです。目先の勝利や若いうちの結果に全くこだわっていません。そこが日本と決定的に違います。日本では、指導者は教える人、指導者はそれを聞く人。しかしこれは、立場で上下になっているだけで、敬意というのは下から上にしかない。
しかしドミニカでは、敬意は双方向なんです。そもそも指導者のために選手がいるなんてあり得ない。選手がいるから指導者が必要なんだと考え、その選手一人一人が上達するために指導者が何をどうすればいいのかと考えるのが当たり前なんですね。
象徴的だったのは、ある17歳の現地の選手と日本の野球について話押していた時のこと。「日本ではうまくプレーできなかったらコーチに叱られることもあるよ」と言ったら、「えぇっ!」とものすごく驚いた。そして「叱って野球・・・うまくなるのか?」と聞いてきた。そして「ちょっと待って!指導者から選手への敬意はないの?」と。私たちはこの言葉に「はっ」とさせられました。
ドミニカでは、まず指導者が選手に対し自ら敬意を払い、支援を続けるのです。うまくなりたくない選手なんて一人もいないし、三振したくて三振する子は一人もいない。みんなうまくなりたいに決まっている。ですから、怒る必要なんて全くないのです。子供たちが上手くなる環境を作って、たとえ失敗しても常に「前を向け」と声をかけ続ける。ネガティブなことは一切言わず、「君たちは出来る」と言葉をかけ続ける。そして何年でも待つ。それでもできない選手がいたら、「一緒に練習してうまくなろう」と声をかける。そういう中で自然に、選手から敬意が返ってくるんですね。そこで初めて信頼関係が生まれます。
日本の現状を現地の指導者に伝えると、もしかしたら選手は指導者を恐れて野球をやっているのではないかと言われました。ただ怖いから怒られないようにやっているのでは選手から指導者に対する敬意も信頼関係も生まれないよと。
具体的な例で言うと投手の投球過多です。毎日100球近く投げました、翌日や翌々日も試合がありますという時に、日本の指導者は「行けるか?」と聞くんですよ。それはつまり「行け」という意味なんですね。文化上のこともあるとは思いますが、選手から指導者にNOとは言えないですよね。ですから、「はい、行きます」と。しかし本当の指導者であったら、そこで「行けるか」なんてまず聞かないし、選手が「行きたいです」と言っても「いや、お前はもっと上で活躍できる能力を持っている。悔しいだろうが、ここは投げるべきではない」というのが本来の指導だと思うんですね。大人(メジャー)でも100球投げたら中4日開けます。ドミニカの若い投手たちは75球で中5日開けて試合に臨んでいます。日本のアマチュア野球とはとんでもない違いです。
つづく
NPO法人 BBフューチャー
TEL 072-277-3393
http://bb-future.net/
物事の深さを伝えていく事は、芸道の昔の師匠と弟子のように、利害を優先しない人間的信頼関係の上に成り立ちます。自分の立場を守るため、まわりを犠牲にしていては、大切なものを見失っています。このままでは、日本の将来はどうなってしまうのでしょうか。
ps. 新町矢田接骨院の患者様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。現在アメリカ〜ドミニカ共和国の研修中ですが、8/18(火)から営業を再開させていただきます。新町スタッフに成り替わり深くお詫び申し上げます。
つるはし院長